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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「ああ、行きた!」
マスノがとんきょうに叫んだ。なんということなく男の子にさえ力をもっているマスノの一声である。
「いこうや」
「うん、いこう」
正と竹一がさんせいした。
「いこう、いこう。走っていって、走ってもどろ」
「そうじゃ、そうじゃ」
小ツルと松江がとびとびして勇みたった。だまっているのは早苗と、片桐コトエだけである。早苗はもちまえの無口からであったが、コトエのほうは複雑な顔をしていた。家のことを思いだしていたのであろう。
「コトやん、いかんの?」
小ツルがとがめだてるようにいうと、コトやんはますます不安な表情になり、
「祖母に、問うてから」
その小さな声には自信がなかった。一年生のコトエをかしらに五人きょうだいの彼女は、背中にいつも子どものいないことがなかった。数え年五つぐらいから彼女は子守り役を引きうけさせられていたのだ。家へ帰って相談すれば、とてもゆるされる見こみはなかった。そしてまた、それは早苗や松江や小ツルも同じであった。みんな、しゅんとして顔を見あった。数え年十歳になるまでは遊んでもよいというのが、昔からの子どもの掟のようになっていたが、遊ぶといっても、それはほんとうに自由に遊ぶのではなく、いつも弟や妹をつれたり、赤ん坊をおんぶしてのうえでのことだった。