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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

四 わかれ

わあい!

やあい!

時ならぬ沖合からの叫びに、岬の村の人たちは、どぎもをぬかれたのである。叱ってはみても、けっきょくは大笑いになって、大石先生の人気はあがった。

その翌々日、チリリンヤの大八車には、めずらしい荷物が積みこまれた。あんまりこまかいので、チリリンヤはそれをリンゴの空箱にまとめて村を出ていった。道みち、いろんな用たしをしながら一本松までくると、リンゴの箱をそのままかついで歩きだした。腰の鈴がリリンリリンと、足をかわすごとに鳴りつづけ、やがて、リッ と鳴りやんだのが、大石先生の家の縁先である。チリリンヤのリンの音は、どこかから、なにかが届けられるときのあいさつである。いいわけは、あまり必要でなかった。

「はーい。米五ン合の豆一升。こいつは軽いぞ煮干かな。ほい、もう一つ米一升の豆五ン合――」

小さな袋を幾つもとりだして縁側の板の間に積みかさねた。袋には名前が書いてある。それはみな、義理がたい岬の村から、大石先生への見舞いの米や豆だった。

四 わかれ

写真ができてきた。一本松を背景にして、松葉杖によりかかった先生を十二人の子どもたちが、立ったり、しゃがんだりしてとりまいている。