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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

「小石先生、も一ぺんあいたいもんなあ」

「うーん。いつかしらん、うどん、うまかったなあ」

コトエがいった。みんなはそれで、四年前のことをはっきり思いだした。その小石先生が、今日学校にきているかどうかは、みんなにとって大問題になってきた。みんなの足は、知らずしらず早くなった。なかば走りながらマスノは、

「かけしようか、小石先生きとるか、きとらんか」

「しよう、なにかけるん?」

うてばひびく早さで、小ツルが応じた。

「まけたら、ええと、ええと、すっぺ(しっぺい)五つ」

森岡正がそういうと、マスノは右手を高くあげながら、

「すっぺ五つなら、まけてもええわ。うち、先生きーとる」

「うちも」

「うちも」

なんのことはない、みんな小石先生が来ているというのだ。とうとうかけはながれたまま、学校へ近づいた。さすがに新入生の五年生はきまじめな顔をして校門をくぐった。ひょいと見ると職員室の窓から小石先生がこちらを見ている。おいでおいでと手をふられると、みんなはそのほうへ走っていった。

「もうくるか、もうくるかと思って、まってたのよ。ちょっとまって」

そういって出てきた小石先生は、歩きながらみんなを土手のほうへつれていった。