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にはいじん
二癈人
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,388 字 · 23 页
どうも狐にでもつままれた様な話なんです。『君こそ夢でも見たんだろう。僕は昨夜は早くから床に入って今し方までぐっすり寝込んでいたんだもの、そんなことのあり相な道理がない』といいますと、友達は『所が夢でない証拠には、君が帰ってから僕が寝つかれないで永い間読書していた位だし、何より確なのは、見給えこの葉書を、その時書いたんだ。夢で葉書を書く奴もないからね』とむきになって主張するのです。
そんな風に押問答をしながら、結局あやふやで、その日学校へ行ったことですが、教室へ入って講師の来るのを待っている間に、友達が考え深そうな眼をして『君はこれ迄に寝とぼける習慣がありやしないか』と尋ねるのです。私はそれを聞くと、何だか恐ろしいものにぶつかった様に、思わずハッとしました。……私にはそういう習慣があったのです。私は小さい時分から寝言をよく云った相ですが、誰かがその寝言にからかいでもすると、私は寝ていてハッキリと問答した相です。而かも朝になっては少しもそれを記憶していないのです。珍らしいというので、近所の評判になっていた程なんです。でも、それは小学校時代の出来事で大きくなってからは忘れた様に直っていたのですが、今友達に尋ねられると、どうやら、この幼時の病癖と昨夜の出来事とに脈絡があり相な気がするのです。