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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

小栗虫太郎『人外魔境』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人外魔境、人外魔境、人外魔境、人外魔境。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 页

青空文庫

「どうだ。たがいに運だけは、無駄にせんように、しようぜ。百億人に一人、千万年に一度、あるかなしかというような、どえらいもんだから……」

「勝手だ」

と折竹は吐きだすように、言った。

「大体、僕の計画にしてからが、九分どおりが運なんだ。妙に、度胸がいいのが玉に瑕かもしらんが、これも千万年に一度、百億人に一人ど偉い馬鹿みたいなのが出たとき、言いだすような事だ。ねえ、まず吾々は九分通り、死ぬだろう」

「脅かしちゃ、いかん」

「いや、すべては渡れてからのことだ。しかし、僕は君よりも、オフシェンコを、尊敬する。ただ任務――とは、偉い!」

不興気に出てゆくセルカークの向うに、大地軸孔の怪光があがっている。ぶよぶよ動く淡紅の幽霊のように、尖峰を染めだし氷塔をわたり……それも間もなく一瞬の夢のように消えてしまう。そういう時、折竹の胸にはザチのことが泛んでくる。地底の女王、ムスカットでの別れのときの涙。いまは彼も、懐かしくさえなっている。妨害するというが、そんな様子もない。彼女はいま、なにを思っているのだろう。

翌日、ヒルト博士らはついに去ってしまった。牛をつらねたながい行列を、折竹らは大岸壁のうえからながめている。