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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
小栗虫太郎『人外魔境』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人外魔境、人外魔境、人外魔境、人外魔境。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 页
生きている氷河
と、式部官が首をさげた時その婦人の姿は、昇降階に続く「騎士の間」に消えていたのである。その場には、侍従長やら将軍やらがいたが、凜とあたりを払うその婦人の威厳には、誰も止めるものがなかったのだ。
キンメリア――それは地図上にない国である。
生きている氷河
折竹は、舞踏にも加わらず宮苑のなかを歩いていた。スミルナの無花果、ボスラーの棗椰子、エスコールの葡萄――。近東の名菓がたわわに実っているところは、魔宮か、魅惑の園のよう。そこへ、日時計のついた噴泉が虹をあげ、風は樹々をうごかし、花弁は楽の音にゆすられる。彼は酒気をさまそうと、ぽつねんと亭にいたのだ。
(セルカークの奴、この辺じゃなかなかの羽振りじゃないか。マア情報省の機関区長どころだろうが……、どうして領事くらいは敵わんような勢力がある)
そこへ、植込の陰からぷうんと女の匂いがした。棕櫚の花粉のついた裳裾がみえたとき、彼の横手からすうっと寄り添ってきた、女がいる。
「お久しう。折竹さん、ほんとうに暫くでございました」
いわれて、婦人をひょいと見たが、彼には全然未知の女だ。額のひろい、思索深げな顔。齢は四十に近いだろうが、々として美しい。