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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
小栗虫太郎『人外魔境』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人外魔境、人外魔境、人外魔境、人外魔境。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 页
さいしょは、疲労と空気の稀薄なためおそろしい労作だったが、だんだん先へゆくにしたがい氷質が軟かくなる。しかも、地表とはちがい、ほかつくような暖かさ。そこで諸君に、氷河の内部がいかなるものか想像できるだろうか。
四人はいま、微妙なほんのりした光に包まれている。しかも、四方からの反射で一つの影もない。円形の鏡体、乱歩の「鏡地獄」のあれを、マア読者諸君は想像すればいいだろう。そのうえ、ここはさまざまな屈折が氷のなかで戯れて、青に、緑に、橙色に、黄に、それも万華鏡のような悪どさではなく、どこか、縹渺とした、この世ならぬ和らぎ。これが、人間をはばむ魔氷の底かと、時々四人はぐるりの壁に見恍れるのである。そのうち、ケルミッシュがアッと叫んだ。みると、氷のむこうにまっ黒な影がみえる。
「大懶獣」と呼吸を愕っと引いて、ダネックが唸るように言った。「あれも、第三紀ごろの前世界動物だ。高さが、成獣なれば二十フィートはあるんだがね」
それは、やや距離があってか、そう巨きくは見えない。しかしこれで、「天母生上の雲湖」の秘密の一部を明かにした。
やがて往くと、一本その長毛が氷隙から垂れている。