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じんせいせいかいいん

人生正会員

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,238 字 · 23 页

青空文庫

専務の青山さんは仲人志望を諦めない。帽子を被らないものは昇給させるなというくらいだから、思い込むと執念が深いのだろう。又食堂で僕を捉まえて、

「小野寺君、その後天下の大勢は何うだね?」

と訊いた。

「全然見込がありません。再婚は一夫多妻だそうですから」

と僕は広瀬さんの場合を話して、社長の主張を説明した。

「そういうことを問題にして真剣になる丈け脈があるんじゃないかな? これはもう少し議論を吹っかけて探って見るんだね」

「駄目ですよ。うっかりすると打ん撲られます」

「兎に角、少しでも心境に変化が見えたら、知らせてくれ給え」

僕は庶務課長の広瀬さんと極く親しい。仕事の上からも、お互は絶えず接触を保つ必要がある。間もなく年が改まったのを切っかけに、広瀬さんは僕を家へ招いてくれた。新夫人を紹介する為めだった。僕が社長の道心を話したら、広瀬さんは宗教家丈けに、それは結構なことだと言った。社長の再婚反対論には一切触れない。僕はこれでも考えている。社長がこう言っていると一々相手に話した日には、会社の中が四分五裂してしまう。僕が社長の頭陀袋の口を握っているから、会社全体の統一が取れるのである。