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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
帆村はその移された場所を光枝に質問したのだ。ところが光枝は、知らないと答えたので、帆村が悲観したのであるが、まさかその重要物件が、陽明門の額から出て、旦那様の懐中に移されたとは、さすがの帆村も気がつかなかったのであろう。しかるに光枝は一歩お先に、そのことに気がついた。
まだ帆村探偵の知らない事実を、風間女探偵は知っているのだ。彼女はちょっと得意であった。
だが、その重要物件というのがなんであるか、光枝には分っていなかった。帆村は大体知っているのであろう。知っていればこそ光枝などをこんなところへ住込ませて、大袈裟な捜査陣を張っているのだ。
(いいわ、こっちで先生よりもお先へ、その重要物件を失敬してしまおう)。そう決心した光枝は、その夜更けて、朋輩の寝息を窺い、ひそかに旦那様のベッドに近づこうとした。だがそれは失敗だった。ベッドの置かれてある主人公の居間は、錠がちゃんと下りていて、明ける術がなかった。
その翌朝のこと、光枝は旦那様の居間へはいっていった。旦那様は、起きて莨を喫っていた。彼女は挨拶をして、朝刊新聞をベッドのところへ持っていった。
旦那様は、きょうは不機嫌と見えて、常に似ず一言も冗談さえいわない。