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ものをこわすのがしょうばいじけん

什器破壊業事件

海野 十三

「大洋」1939(昭和14)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页

青空文庫

「ときに貴女は、なかなかいい身体をしていますね。うまそうな女というのは貴女のことだ。ちょっとこっちへいらっしゃい。誰も居ないから、大丈夫です」帆村はそういって、腰をうかすと、いきなり風間光枝の手首を握って、ひきよせた。

「まあ、先生」光枝は、愕きのあまり呼吸が停りそうになった。ここへ来る前、星野社長はわざわざ、帆村の潔癖を保証したが、その話とはちがって、彼はとんでもない痴漢であった。六条子爵の場合よりも、もっともっと露骨で下卑ている。光枝は、帆村と抗争しながら、そのとき脳裏に電光の如く閃いたものがあった。それは、傍の衝立の向うに、なにか手の放せない仕事をしているといった男のことを思い出したのだ。あの男は、彼女がこの部屋に入ったときからあそこにいて、静かに仕事をつづけているらしい。なぜなら、彼はどこへ立った気配もないから、やはりあそこにいるにちがいないのだ。

「あっ、先生。およし遊ばせ。あの衝立の向うに仕事をしていらっしゃる所員の方に対しても、恥かしいとお思いにならないんですの」といって、帆村に握られた腕を無理やりに払った。

「えっ、所員ですって。そんな者はいませんよ。