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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
「不思議だのう」と呟きながら、なお中納言家は佇んでおられた。
その間には侍臣や腰元たちは、楓を殺した敵らしいものが、どこかその辺りに隠れていないかと、それを探そうとでもするかのように、木立の間や岩の陰や、椿の林などへ分け入った。
広いといっても庭であり、植込みが繁っているといっても、たかが庭の植込みであって、怪しい者など隠れていようものなら、すぐにも発見されなければならなかった。
何者も隠れていなかったらしく、人々はポツポツと戻って来た。
と、不意に人々の間から、絹を裂くような女の悲鳴が聞こえた。
老女と一緒に来た腰元の中の一人、萩枝という二十一の小肥りの女が、両手で空を掴みながら、クルリと体を回転し、そのまま地上へ転がったのである。
狼狽して人々は飛び退いた。
その人の垣に囲まれたまま、萩枝は地上を転がり廻り、胸を掻き髪を※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)り、
「苦しい! 麻痺る! ……助けて助けて!」と嗄れた声で叫んだが、見る見る顔から血の気が消え、やがて延びて動かなくなった。
この日の宵のことであった。山岸主税は両国広小路の、例の曲独楽の定席小屋の、裏木戸口に佇んで、太夫元の勘兵衛という四十五六の男と、当惑しながら話していた。