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かたきうちきょうだいがさ
仇討姉妹笠
国枝 史郎
「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页
(巻添えを食ってはたまらない)
こう思った主税が身を飜えして、この露路から走り出したのは、それから間もなくのことであった。
白刃に囲まれて
この時代のお茶の水といえば、樹木と藪地と渓谷と川とで、形成られた別天地で、都会の中の森林地帯であった。
昼間こそ人々は往き来したが、夜になるとほとんどだれも通らず、ただひたすら先を急いで迂回することをいとう人ばかりが、恐々ながらもこの境地を、走るようにしてとおるばかりであった。
そのお茶の水の森林地帯へ、山岸主税が通りかかったのは、亥の刻を過ごした頃であった。
あやめが行方不明となった、勘兵衛という太夫元が、何者かに頓死させられた、この二つの意外な事件によって、さすがの彼も心を痛め、この時まであてなく江戸の市中を、さまよい歩いていたのであった。
(荏原屋敷とは何だろう?)
このことが彼の気になっていた。
独楽の隠語の中にもこの字があった。勘兵衛という男もこの言葉を云った。そうしてあやめという曲独楽使いも、この屋敷に関係があるらしい。
(荏原郡の馬込の郷に、そういう屋敷があるということは、以前チラリと耳にはしたが)
しかし、それとて非常に古い屋敷――大昔から一貫した正しい血統を伝えたところの、珍らしい旧家だということばかりを、人づてに聞いたばかりであった。