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イタリアのことう

伊太利亜の古陶

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,477 字 · 31 页

青空文庫

海岸のくせに海から七八丁もあるんじゃあ」

「それは――買うのでしたらね贅沢も申しましょうけれど」

彼は、急なカーヴで体を揺られながら怪訝そうに妻を見た。

「――買うならって――ただでとる気か? ハハハハ。お前らしい理屈だ。今時ただの地面などはアフリカの端に行ってもあるまいよ、残念ながら――」

みや子は莞爾ともせず、声を低めて熱心に囁いた。

「何でも冗談にしようとなさる! だから皆よい機会を失ってしまうのですよ。――高畠夫人がね、若しかしたら沼津の土地を無代で分けて下さっても好いお気持らしいですよ」

「へえ。――何のために? そんなことお前が当って見たのか?」

「まさか、不見識な。今度私共が晨子様のことで尽力してさしあげたお礼という意味に、先様でお思い付になったらしいのです」

今までほんの座興的に話していた日下部は、この説明で真面目に妻の言葉を打ち消した。

「そんなことはある筈ないよ。またあったとしても俺としては受けられない」

「――それは勿論、始めから私共がそんな打算などはまるでぬきにしてお世話したのは先方だって万々御承知です。だからこそまた、そういう気にもおなりなすったのでしょう? 私は、若しそういうことになれば、素直に先の御厚意を受けるのが礼だと思いますよ、種々にひねくれて考えるのはこちらの心の卑しさを見せるよう