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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

「週刊朝日涼風読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 页

青空文庫

八

「みんな嘘っぱちよ」

べつの娘が云う。

「女が本当に誰かと寝ただら、おくびにも寝たなんて云わねえもんだ、なあ先生よ」

彼女たちは杢助の脇に寝ころんだり、足を投げだしたり、極めて放恣な恰好でお饒舌りをし、ときにじれったそうな声をあげて、杢助の躯へ抱きついたり、叩いたり捻ったりした。修業者が側にいるときは、遠慮なくかれらにも手を出した。四之木はそうされるのを待っているようであった、そのために御馳走拵えも精が出るようであったが、彼女たちは好んで二之木二郎に手を出した。彼女たちが来ると、二之木は渋い顔をしてふくれ返るのだが、彼女たちの方ではお構いなしで、むしろそれが面白いというように、言葉にしろ動作にしろ恐ろしいほど大胆な表現を用いて、思うままに彼を翻弄するのであった。

「そんなにふくれるでねえよ、二郎さん」

彼女たちはこんなふうに云う。

「顔なんぞふくれたってなんの使いみちもありゃしねえだ、どうせふくらかすだらもっと使いみちのあるところにするがいいだよ」

そしてげらげら笑うのであった。

八

二之木二郎はついに辛抱を切らしたようであった。彼は他の四人とも相談したらしい、八月になってまもない或る夜、五人で杢助の前へ来て坐った。