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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

(俊寛を抱きしめる)

第二場

俊寛の小屋。いそに漂着したる丸太や竹を梁や桁とし、芦を結んで屋根を葺き、苫の破片、藻草、松葉等を掛けてわずかに雨露を避けたるのみ。すべて乏しく荒れ果てている。俊寛、藻草を敷き破れたる苫をかけてねている。第一場より一か月後の夜、隙間より月光差し入る。小屋の外はあらし吹く。

俊寛 (突然苫をおしのけ、起き上がり、あたりを見回す)魔道に落ちているのか。妻よ。今に、今に恨みを晴らしてやるぞ! (われにかえりたるごとく)あゝ夢か。(急に自分の地位をはっきりと意識したるごとく)あゝわしはどうして死にきれないのだ。すでに三七日も飲食を断っているのに! わしは干死にすることもできないのか。わしの生命の根は執念深く断ちきれない。このあさましいわしの業をいつまでもさらさせようとするのか。食を断っても断っても死にきれぬ蛇のように。わしの力はわしの四肢からもう失せたのにわしの根はいつまでも死にきらないのか。運命はあくまでもわしを責めさいなもうとするのか。わしは死にたい。死にたい。ただ恨みだけがわしの生命を燃やしているのだ。わしは死んでただわしの恨みだけが生きているのだ。