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ふしゅう

俘囚

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,938 字 · 31 页

青空文庫

「しかし、その奇妙な臓器紛失が、検束されていた僕たち社員を救ってくれることになった、僕たちが手を下したものでないことが、その奇妙な犯罪から、逆に証明されたのだ」

「というと……」

「つまり、人間の這入るべき入口の無い金庫室に忍びこんだ奴が、三万円を奪った揚句、番人の臓器まで盗んで行ったに違いないということになったのさ。無論、どっちを先にやったのかは知らないが……」

「思い切った結論じゃないの。そんなこと、有り得るかしら」

「なんとかいう名探偵が、その結論を出したのだ。捜査課の連中も、それを取った。尤も結論が出たって、事件は急には解けまいと思うけれどネ。ああ併し、恐ろしいことをやる人間が有るものだ」

「もう止しましょう、そんな話は……。あんたがあたしのところへ帰って来てくれれば、外に云うことはないわ。……縁起直しに、いま古い葡萄酒でも持ってくるわ」

あたしたちは、それから口あたりのいい洋酒の盃を重ねていった。お酒の力が、一切の暗い気持を追払ってくれた。全く有難いと思った。――そしてまだ宵のうちだったけれど、あたしたちはカーテンを下ろして、寝ることにした。

その夜は、すっかり熟睡した。