轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

七

しかし三之丞は平伏したまま言訳を云おうとしなかった。

「まことに三之丞の不調法、以後は必ず慎みます故このたびはお慈悲を以てお許しのほど願い上げ奉りまする」「あやまったと分れば、このたびだけ見遁して遣わす。滝川はひとくせある奴じゃ、よく労って交わるがよいぞ」三之丞がなにも云わないから仕方がない。光政はしかしなにも云わない三之丞が可愛くなり、つと短刀を取って差出した。

「さあ取れ、遣わすぞ」「……はっ?」「そんな不審そうな眼をすることはない、先日狼を射止めた褒美じゃ」「……はっ」「家老共のあいだで加増の沙汰を願い出たが、あのくらいの事で加増しては戦場の手柄に遣わすべき恩賞に障る、それで加増はならぬと申した。これはその代りじゃ」「……かたじけのう」

三之丞は膝行して拝領した。珍しくも、その時三之丞の眼には涙が光っていた。

七

こうして三之丞の方は叱られて済んだが、滝川幸之進はどうしたか。幸之進はあれ以来しきりに噂を気にしている。……二百石で召抱えられてから既に三年、自分のつもりでは岡山へ行けば剣道の師範にでもなれる気でいたのが、別にそんな沙汰もなく、馬廻りの普通の勤めで、三年間なんの変哲もない月日がたってしまった。