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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页
八
――あやまりました。申訳ございません。とその場で謝罪しても怒りは解けたであろう、新規お召抱えにするほどなら、光政はもとより幸之進を充分認めていたのである。でなくてただ二百石捨てるような真似はしない、これは役に立ちそうだと思ったから抱えたのだ。しかしそれからよく見ていると、一刀流の腕こそすぐれているが人柄は粗暴で、到底家臣たちの間に立って師範をする人物ではない。――これはもう少し修行をせぬといかん。
そう思ったので、馬廻りを命じて様子を見ていたのである。だから光政が云うだけ云うのを聞いて、あやまったと謝罪すればよかったのだが、根の高慢がひねくれだしていたのでそんなことには気もつかず、幸之進はむっとした態度で下城してしまった。光政は叱りつけはしたものの、あれだけ理を尽して云ったのだから、心がしずまれば分るであろう、いまに詫びをねがい出るに違いないと考えていた。
八
するとその翌日、なにか城外が騒がしいので見にやると、
「武家屋敷に出火がございます」ということだった。五月なかば、新暦で云えば六月である。失火に季節もないだろうが珍しいことだ。しかも武家屋敷というので、光政はすぐに天守へあがってみた。