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あにのこえ

兄の声

小川 未明

「子供の広場」1946(昭和21)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,426 字 · 9 页

青空文庫

」といって、考えました。

「美しい、絵のようなけしきが、目に浮かんでくるよ。」

「どんなけしき? 現実でなく、架空な、未来の世界とでもいうのですか。」

「いや、そんな空虚な夢ではない。たとえば、赤い夕空の下に、工場の煙突がたくさんたっている、近代的な街の風景とか、だいだい色の太陽が燃える丘に、光線の波うつ果樹園とか、さもなければ、はてしない紺碧の海をいく、日章旗のひるがえる商船とか、そんなような、清らかで、朗らかなうちにもさびしい、けしきが目に浮かぶのだよ。」と兄は、いったのでした。ぼくは、

「にいさん、そうした美しさなら、いくらもあるけしきじゃありませんか。」と、いったのです。

兄は、じっとぼくを見て、

「ただわたしがそういっただけでは、わからないだろう。なるほど外観からいえば、この種の街や、工場や、農園は、絵として見ても、手近なものであるにちがいない。問題は、その町や、村で働いている人たちのことだ。わたしが、これまであった、あのような、謙虚で、正直で、しんせつな人々が働いているということでなければならぬ。かりにそうしたどうしの集まりだと想像してごらん。