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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

「ええ」

それから小説の話をしたが、本当はあまり小説を読んではいけないと、とめられているらしかった。

私たちは円亭を出て、形ばかりにお参りして別れ道の所まで一緒に歩いて別れた。

帰っても私の胸は何かときめいていた。姉にも千光寺で逢ったことは言わなかった。

がそれから暫らく彼女に逢えなかった。家へも茶園へも遊びに行くわけにもゆかなかった。

が夏に入ると鴈治郎が来て偕楽座に芝居がかかった。浜吉という尾道一の茶屋の先代の追善興行というので、一座は所の習いに随って「町まわり」をした。尾道の通りは極く狭いので、一座の俥がずらりと並ぶと、見物の人だかりで街は一杯になるのであった。私は千光寺路から長屋の通りに出て見ると、ちょうど行列はとまって、口上を言っている所であった。と人だかりの後ろに私は彼女を見つけた。近づくと彼女も私を知ってニッコリと会釈した。例の支那人の召使がついていたし、人ごみで話は出来なかったので、なげかけるように、

「見に行きますか」

「ええ。行きます。明日、お母さんと」

「僕も行きます。姉さんと」

二人はうなずき合った。やがて俥の列は賑やかな囃につれて動き出し、私たちは人波にへだてられた。