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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

「そうお、見せて」

と籠を覗き込んで彼女は声をあげた。「ほんとに、まあ、よくとれたことね、兄さん」

「その代り市村奥の山をさんざん歩き廻って、くいに引っかかれたよ」

と彼はベンチの上に茸をとり出して並べた。

「松茸なんかはありふれてつまらないよ。きんたけに、大はぎ小はぎ、ひめじ、かのこ――これは何という茸だろうね」

「木の葉かずきと言うんですよ」

と私は口を出した。

「木の葉かずき――ふん。なるほどね」

「僕のくには奥だからこんな茸はよく知ってますよ」

「奥ってどこですか」

「庄原ですよ」

「はあ、庄原ですか。それだったら詳しいでしょう」

「これはね。お露がとてもおいしんですよ。一番おいしい茸と僕は思うね」

「じゃあお露にしましょう。今晩ね。……兄さん、庄原と言ったら、家のお父さんが子供のころ、勉強に行ってらした所でしょう?」

「そうだ。育英塾というのが昔あったんだそうだ。君知ってますか」

「話しに聞いてます。昔は県下でも庄原は学問が進んでいたんだって」

「尾道から庄原へ勉強に行くと言うのもへんな話だけれど、遅れていたんだな」

「今だって尾道は学問は駄目ですね」

「そうです。