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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

がこの企てを知って学校当局は禁止し、講堂を使用させぬと言った。

私は直ぐに校長室に談判に行った。校長はすでに更迭して泉英七という人であった。

この校長は前校長とはまるで違って威儀を作らぬ人であったが、柔和に、淡々として私の申出を拒絶した。私は気負うて行ったので、拍子ぬけがした。

「私は先生を恨みます」

と言ったら私の肩をたたいて、

「中々人物だ」

と言った。反抗するには敵愾心が起らなかった。

この校長はあまり柔和で、校長として威厳がないという評判が学校中にひろがった。殊に前校長の威厳主義と比べてそういう批評が生じるのも無理はなかった。私もそう思わぬではなかったが、やがて或る式日に講堂で泉校長の声明を聴いて私は認識を改めねばならなかった。校長はその噂を知ったらしく、

「叱咤怒声をあぐるは車夫馬丁の事であります」

その声には一種のほこりが出ていた。

私はなるほどと思った。私は立派な声明だと思って校長を支持する気になった。

この校長になってから一種の民主的な空気が校内に漂うようになった。私が卒業してずっと後までこの校長が奉職していられた。

私が卒業して、父がもう上の学校へはやらぬと言った時、この校長は父あてに手紙を書いてこの子は有望だから哲学をやらせるように勧告して下さった。