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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

ところが私はどの人相見が見ても散財の相があると言われる。理財の質でない。そこらが鋭い直感で父に解るので、そんな教訓めいたポーズをとらせたのであろうと思う。しかし私の感情的、文人的性向はそうしたもので抑えることは出来なかった。又父といえども謙遜で、義理堅いところから奢侈にならないので、金に縁のある人間ではなく、感情的、道徳的素質が濃かった。

父は浄瑠璃が好きで自分で語り、三味線をひいた。私の家では素人の浄瑠璃会がよく催された。盲目の浄瑠璃の師匠を父が世話して家を持たせていた。太棹も、見台も自分用のを持っていた。

母、祖母、姉たち、武村(分家)の叔母、従姉たち、近所の人たちが聴き手であった。

幕がつくられ、紅い毛布を敷き高座がもうけられた。

私は姉たちと隅っこにひとかたまりに陣どって、さざめいていた。私たちは裃をつけて、太夫らしく他所行きになって、泣いたり、大声を立てたりして見せる父に対し、一様にきまり悪さと楽しさとの混じった感情を抱いていた。父が女の声色を使う時には私は下を向いていた。父は太夫になるだけでなく、三味線ひきにもなった。その異様な掛声には私は冷汗が流れた。