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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
城の中、保護者の下でのみ、可能なる美徳に飾られたる子供たちは、その美徳の故にますます世間の嵐を耐え難く、後にはその美徳を足手まといと感じ、遂にはその美徳そのものさえ支え難くなりはしないであろうか?
後年子供たちがようやく巣立ちに用意しなければならなくなったころ、父は子供たちのこの美徳のために悩まされだした。
「世間はお前たちの考えているようなものではないよ」
こんな事を言わねばならなくなった。
「そんな貸せて言うものにいちいち貸したりするんでは、わしはもう知らんよ」
こんなことも言いだした。
「お前がそんなこと言ったって、○○さんなんかに任せられるもんか」
「あの人はうそを吐く人とは思えません。人を疑うのはよくないと思います」
と、父は苦しそうな顔をして、歯がゆげに言うのであった。
「○○さん、○○さんと言って、お前がまだ知らないんだよ」
がもう遅かった。子供たちは父から養われた美徳のために、人を疑うことが出来なかった。そして却って父の徳の足らぬものとして裁いた。
あわれな父よ! かような父が軈て、子供たちの満身傷をあびて帰って来るのを見なければならぬのは遠いことではない。