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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

叔母はその姑に仕えて見送り、頑固な舅をいたわりつつ、実にむつかしい、専制的な夫に仕えて、忍従の日々を送っているのであった。叔母にとって楽しみは三つの歳から貰って育てた姪の重子だけであったが、これとてまだ十一の子供でもとより相談対手にもなれる歳ではなかった。叔母を支えているものは実に浄土真宗の信仰だけだったのだ。こうした家へ三つの歳に養女にやられた妹重子が庄原の父母の家で育った私や、艶子と比べて、どんなに現実的な、辛い思いを通らなければならなかったかは言う迄もないことだ。今日重子が倉田家の伝統であるロマンチックな美しい純情を失わずにいるのは、叔母の信仰の力と、本人の健気な修養によるのだ。私は人間のいのちの小さな種子がどんな境遇に置かれるかの運命を思うと、恐れと敬虔とを感じずにはいられぬ。

私に与えられた勉強部屋は屋根裏の、大きな梁木のむき出しになった凡そ美というイデーとかかわりのないものであった。部屋の隅には雑具が物置のようにつまれたままで、床もなく、畳は汚れて古く、他所の屋根瓦の外には眺めもなかった。一番困るのはおじいさんの刻み煙草を入れた瓶がつづらの上に載せてむき出しに置いてあることだ。