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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私はどうしたものか少しも恐くなかった。心は矜りに充ちていた。「上級生のおもちゃなんかになるものか」
やはり美少年の噂のあるクラスの誰れ彼れが、その私たちをなぐると言って威した野球選手のYのチャームになったということを聞いて、私はひそかに軽蔑した。汚ないものがくっついてる気がした。
がこの事がキッカケとなって私の注意が同性愛というものに向いた。
野平君は薩摩の同性愛の「しづのおだまき」の一節などを唱って聞かせたことがあった。
「袖に匂いの薫り来る」とか、「契りを深く交わしける」とかいうような句があった。
二年生の時私は同じ教室にはいって来た酒井君という同級生と手紙をやりとりしだした。この少年は鞆の古い銘酒屋の息子で、音楽と英語とが得意だった。丈が高く、声がきれいで、笑う時に尾道の種子姉に口元がどこか似ていた。それがへんに私を牽き付けた。
私が休暇にやった手紙に響の応じるように返事をくれた。レター・ペーパーに一杯細かく書いた長い手紙を。
「ハンカチをピリピリと噛み裂いて川に流したとき」とか、「君を思って星を数え、玉藻の寄る浜べで泣いた」
とかいうような、少年の春期の詩情のあふれたものだった。