轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はつつぼみ
初蕾
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 页
「乳をやるときは清らかな正しい気持でと仰しゃった、あれはこのような気持をいうのだな」
うめはある時ふとそう気がついた。
「紙へはじめて筆をおろすときの、姿勢の正しいおちついたこの気持……ほんとうにこういう気持でやる乳なら、児に対しても恥かしくはないだろう」
眼が明けば、今まで見当のつかなかったこともずんずんわかるようになる、家常茶飯いちいち面倒だと思った事がらが、いつか自分からそうしなければ済まぬようになり、初蝉の鳴きだす頃には良左衛門など、
「まるで人が違ったようだ」
と云いはじめた。
はま女がよろこんだことは云うまでもあるまい。時どき訪ねて来る喜右衛門も、
「たいへんな御丹精でしたな」
とはま女の努力について感歎のこえをあげた。……ある日そういう話のあとで、はま女はうめとの約束について喜右衛門に相談をもちだした。誕生までという期限をもう少し延ばして貰えないかというのである。
「小太郎もあのとおり馴れてしまったし、せめて立ち歩きのできるまでいて呉れると助かるのですがね」
「そうでございますな」
喜右衛門はなにか考える風だったが、やがてこう云った。
「ではそのまえに一つうちあけたお話を致しましょう」