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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

「山形新聞」1936(昭和11)年3月~8月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 页

青空文庫

「親分どうも変ですねえ、表を閉じて遊ぶなんて、まず余っ程の大尽でなけりゃア、当今やるこっちゃありませんぜ」

藤作はいくらかムカッ腹で云った。

「そうさ、こいつアちょっと変だ」

林蔵もいくらか怪訝そうに云った。

「戸をどやしつけてみましょうか」

「そうさな、ひとつひっ叩いてみねえ」

そこで藤作は戸を叩いた。

「へ――い、どなたでございますかな、今晩は都合で閉めましたんで。お馴染様であろうとご一現様であろうと、お断わりすることになってますんで」

若衆であろう潜戸の向こうで、こう素っ気なく挨拶をした。

「親分あれをお聞きですか、お馴染様であろうとご一現様であろうと、お断わりすると云っています」

「うむ、どうも仕方がねえな。ともかくももう一度俺の名を明かして、その若衆に掛合ってみな」

「へい、よろしゅうございます。……おいおい若衆、他でもねえが、赤尾の親分を知っているだろうな。お前のところのお山さんとは、切っても切れねえ仲だってこともよ。今年の暮ごろには受出してよ、黒板塀に見越の松、囲うってことも知ってなけりゃア嘘だ。その林蔵親分がな、ここにおいでなすっているのだ。ヤイこれでも戸をあけねえか」