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ばけいちょう
化銀杏
泉 鏡花
「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页
十三
」
と投ぐるがごとく言いすてつ。苦笑して呟きたり。
「ほんとうに泣より笑だねえ。」
十三
お貞の言途絶えたる時、先刻より一言も、ものいわで渠が物語を味いつつ、是非の分別にさまよえりしごとき芳之助の、何思いけん呵々と笑い出して、
「ははは、姉様は陰弁慶だ。」
お貞は意外なる顔色にて、
「芳さん、何が陰弁慶だね。」
「だってそんなに決心をしていながら、一体僕の分らないというのはね、人ががらりと戸を明けると、眼に着くほどびっくりして、どきり! する様子が確に見えるのは、どういうものだろう。髯の留守に僕と談話でもしている処へ唐突に戸外があけば、いま姉様がいった世間の何とかで、吃驚しないにも限らないが、こうしてみるに、なにもその時にゃ限らないようだ。いつでもそうだから可笑いじゃないか。それに姉様のは口でいうと反対で、髯の前じゃおどおどして、何だか無暗に小さくなって、一言ものをいわれても、はッと呼吸のつまるように、おびえ切っている癖に。今僕に話すようじゃ、酸いも、甘いも、知っていて、旦那を三銭とも思ってやしない。僕が二厘の湯銭の剰銭で、(ちょいとこさ)を追返したよりは、なお酷く安くしてるんだ。