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ばけいちょう
化銀杏
泉 鏡花
「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页
六
さあ怒ったの、怒らないのじゃあない。(それでは手前、活計のために夫婦になったか。そんな水臭い奴とは知らなんだ。)と顔の色まで変えるから、私は弱ったの、何のじゃない、どうしようかと思ったわ。」
六
「(なぜ一所に死ぬとは言ってくれない。愛情というものは、そんな淡々しいものではない。)ッていうのさ。向うからそう出られちゃあ、こっちで何とも言いようが無いわ。
女郎や芸妓じゃあるまいしさ、そんな殺文句が謂われるものかね。でも、旦那の怒りようがひどいので、まあ、さんざあやまってさ。坊やがかすがいで、まずそれッきりで治まったがね、私ゃその時、ああ、執念深い人だと思って、ぞッとして、それからというものは、何だか重荷を背負ったようで、今でも肩身が狭いようなの。
あとでね、あのそら先刻いった黒眼鏡ね、(烏蜻蛉見たように、おかしいじゃアありませんか。)と、病気が治ってから聞いたことがあったよ。そうするとね、東京はからッ風で塵埃が酷いから、眼を悪くせまいための砂除だっていうの、勉強盛なら洋燈をカッカと、ともして寝ない人さえあるんだのに、そう身体ばかり庇ってちゃあ、何にも出来やしないと思ったけれど、まさかそんなことをいえたものでもなし、呼吸器も肺病の薬というので懸けるんだッて。