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ばけいちょう

化銀杏

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页

青空文庫

十

たくなったり、飛んだことに腹が立ったりして、まるで夢中になるもんだから、仕方なしに帰って来ると、旦那も後からまた帰る、何でも私をば一人で手放しておく訳にゃゆかないと見えて、始終一所に居たがるわ。

だもんだからどこも良い処には行かれないで、金沢じゃ、あんなつまらない学校へ、腰弁当というしがない役よ。」

と一人冷かに笑うたり。

十

「何もそんなに気を揉まなくッても、よさそうなものを。旦那はね、まるで留守のことが気に懸るために出世が出来ないのだ、といっても可いわ。

そんなに私を思ってくれるもんだから、夜遊はせず、ほんのこッたよ、夫婦になってから以来、一晩も宅を明けたことなしさ。学校がひければ、ちゃんともう、道寄もしないで帰って来る。もっとも無口の人だから、口じゃ何ともいわないけれど、いつもむずかしい顔を見せたことはなし、地体がくすぶった何しろ、(ちょいとこさ)というのだもの。それだが、眼が小さいからちったああれでも愛嬌があるよ。荒い口をきいたことなし、すりゃ私だって、嫌だ、嫌だとはいうものの、どこがといっちゃあ返事が出来ない。けれども嫌だから仕様がないわ。