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ばけいちょう

化銀杏

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页

青空文庫

十四

)で、早くなおって欲しいのは、実は(死ねば可い。)と思うからだよ。

ねえ、芳さん分ったろう。もう胸が一杯で、口も利かれやしないから、後生だ、推量しておくれ。も、私ゃ、私はもう芳さんどうしたら可いんだねえ。」

と身を震わしたるいじらしさ!

お貞がこの衷情に、少年は太く動かされつ。思わず暗涙を催したり。

「ああ姉様は可哀そうだねえ。僕が、僕が、僕が、どうかしてあげようから、姉さん死んじゃあ不可いよ。」

お貞は聞きて嬉しげに少年の手をじっと取りて、

「嬉しいねえ。何の自害なんかするもんかね、世間と、旦那として私をこんなにいじめるもの。いじめ殺されて負けちゃ卑怯よ。意気地が無いわ。可いよ、そんな心配は要らないよ。私ゃ面あてにでも、活きている。たといこの上幾十倍のつらい悲しいことがあっても、きっと堪えて死にゃあしないわ。と心強くはいってみても、死なれないのが因果なのだねえ。」

ほろりとして見る少年の眼にも涙を湛えたり。時に二階より老女の声。

「芳や、帰ったの。」

「あれ、おばあさんが。」

「はい、唯今。」

十四

二段ばかり少年は壇階子を昇り懸けて、と顧みて驚きぬ。時彦は帰宅して、はや上口の処に立てり。