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ばけいちょう

化銀杏

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页

青空文庫

三

」

「いやな! 芳さんだ。恐いことね。」

お貞は身震いして横を向きぬ。少年は微笑みたり。

「何だ、臆病な。昼じゃあないか。」

「でもそんなことをお言いだと、晩に手水に行かれやしないや。」

「そんなに臆病な癖にして、昨夜も髯と二人連で、怪談を聞きに行ったじゃあないか。」

お貞はまじめに弁解して、

「はい、ですから切前に帰りました。切前は茶番だの、落語だの、そりゃどんなにかおもしろいよ。」

「それじゃもう髯の御機嫌は直ったんだね。」

三

「別に直ったというでもないけれど、まああんなものさ。あれでもね、おばあさんには大変気の毒がってね、(お年寄がようよう落着なされたものを、またお転宅は大抵じゃアあるまいから、その内可い処があったら、御都合次第お引越しなさるが可し、また一月でも、二月でも、家においでになっても差支えはございませんから)ッて、それッきりになってるのよ。そのかわりね、私にゃ、(芳さんと談話をすることは決してならない)ッて、固くいいつけたわ。やっぱり疑ぐっているらしいよ。」

少年は火箸を手にして、ぐいぐい灰に突立てながら、不平なる顔色にて、

「一体疑ぐるッて何だろう。