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じゅうはちじょうおつ
十八条乙
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,127 字 · 26 页
「あのごたごたでつい忘れたんだな、私が知っていたら医者を変えるとか、湯治にゆくとかなにか方法を考えたろうのに、どうして私に云わなかったんだ」
「火傷はむずかしい病気ではありませんもの」あやは頬笑みながら云った、「なにかいい方法があれば玄智さまがそう仰しゃったでしょう、片手をなくしたわけではないのですから、そんなに大事がらないで下さいまし」
「私の罪だ」庄兵衛はあやが放そうとする手をなお握ったままで云った、「こんな手にしてしまって、これではもう嫁にゆけないじゃないか」
あやの眼が良人の顔へ吸いつくように動いた。庄兵衛は冗談めかして、しかし感情のこもった声で云った。
「もう嫁にゆけないとすると、不都合なことがあっても離縁はできない、これは高価なものについたぞ」
あやも冗談のように、「では安心してわがままができますね」と云った。
正月十七日、庄兵衛は城へ呼びだされ、閉門永蟄居と、家禄の内百石の削減を申し渡された。伊原友三郎を匿い、その逃亡を助けたことが重科に当る、というのである。申し渡しは評定所でおこなわれ、城代家老の佐野図書はじめ、中老、年寄の人たちが立会った。