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じゅうはちじょうおつ
十八条乙
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,127 字 · 26 页
という理由で、大目付から封のまま返されてしまった。このあいだに年があけて享保二十一年となり、四月には年号を「元文」と改元された。
庄兵衛は伊原に宛てて、もういちど手紙を書き、こんどはあやに持たせてやった。もちろん妻の外出は禁に触れることだが、いまでは監視もゆるんでいるし、庄兵衛には法を守るような気持はなくなっていた。
「実際にあったことを詳しく話せ」と彼は妻に云った、「手紙にも書いたが、文字では実際の気持はとうてい伝えられない、おまえの口からじかに云うんだ、あしかけ九年にも及ぼうとする、このみじめな罪人の生活、その中で母に死なれたことも、なにもかも残らず話して聞かせるんだ、遠慮することはないんだぞ、いいか」
あやは眼を伏せたまま頷いた。
さすがに世間を憚って、日が昏れてのちあやをでかけさせた。加助を供に、提灯もつけずにいったあやは、一刻ばかりして帰って来たが、そのようすを見て、結果のよくなかったことが明らかに推察された。
「伊原は会わなかったのか」
「おめにかかりました」あやは眼をあげて良人を見、その眼を伏せながら答えた、「――手紙は見なくともわかっているし、決して忘れているわけでもない、けれども動かしがたい御家法があるので、いますぐにはどうすることもできない、もう暫く辛抱してくれるようにと、仰しゃっておいででした