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じゅうはちじょうおつ

十八条乙

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,127 字 · 26 页

青空文庫

二

外は雪で、庭の木も石燈籠もまっ白に蔽われ、なおはげしく降っていた。伊原は戸のあくのを待ちかねたように、雪まみれのまま縁側へ転げこみ、そこに横倒れになって苦しそうに喘いだ。

「たいへんな血だぞ」と庄兵衛が息をひいて云った、「どうしたんだ」

「たのむ、庭の血の痕を消してくれ」と伊原は囁いた、「裏の木戸からはいった、川の中をあるいて来たから外はいい、木戸から中には痕があるかもしれない、たのむ」

庄兵衛はそのままとびだした。まもなく戻って来ると、羽折をぬいで足を拭き、躯の雪をはらいながら、妻を起こすために寝間へいった。伊原友三郎は妻の従兄に当るし、そうでなくとも、妻の手を借りなくてはどうしようもないと思ったのだ。

二

傷は脇腹に二カ所、一つは殆んどかすり傷だが、一つは相当な深手で、医者の治療を要することが明らかだった。しかし伊原は朝まで待つと主張した。追手が出ているからいまはだめだという、夜が明けるまで急場の手当だけで辛抱しようと云い張った。

あやは傷を見たときちょっと蒼くなったが、すぐに気をとり直したようすで、敏捷に立ちまわり、庄兵衛のぶきような手当ぶりをよく助けた。