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じゅうはちじょうおつ
十八条乙
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,127 字 · 26 页
伊原は絶えず戸外の物音に耳をすませていて、なにか聞きとめると、反射的に神経を緊張させ、眼をぎらぎら光らせた。
「御政道のため或る男を斬ろうとして失敗した」と伊原は告げた、「だがなにもきかないでくれ、西条にはかかわりのないことだし、事情を知らなければ紛争にも巻きこまれずに済む、佐野を――いや或る人物を斬ろうとしたと云ったことも、この場かぎり忘れてもらいたい、わかったな」
「しかし、これからどうするつもりだ」
「ようすをみて江戸へゆく、おれはここで捕えられたり死んだりするわけにはいかないんだ、おれは大事なからだなんだ」そう云って彼は庄兵衛を見、あやを見た、「おれが江戸へぬけだせればよし、さもなければ取返しのつかないことになるだろう、ことによると、――いや、口でこんなことを云ってもしようがない、ただどうかおれが江戸へ脱出できるように力をかしてくれ」
「傷に障るといけません、もうお話はなさいますな」とあやが云った、「少しでもお眠りになるほうがようございます、わたくしたちでなにかよい方法を考えますから」
伊原を庄兵衛の寝間に寝かせ、二人はあやの寝間へはいった。それから殆んど眠らずに、伊原を脱出させる相談をし、外が白みはじめたのに気づくと、下男の加助を松屋町へやって、笈川老医に往診を頼んだ。