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じゅうえんさつ
十円札
穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页
粟野さんはいつも易やすと彼の疑問を解決した。しかし余り無造作に解決出来る場合だけは、――保吉は未だにはっきりと一思案を装った粟野さんの偽善的態度を覚えている。粟野さんは保吉の教科書を前に、火の消えたパイプを啣えたまま、いつもちょっと沈吟した。それからあたかも卒然と天上の黙示でも下ったように、「これはこうでしょう」と呼びかけながら、一気にその個所を解決した。保吉はこの芝居のために、――この語学的天才よりもむしろ偽善者たる教えぶりのために、どのくらい粟野さんを尊敬したであろう。……
「あしたはもう日曜ですね。この頃もやっぱり日曜にゃ必ず東京へお出かけですか?」
「ええ、――いいえ、明日は行かないことにしました。」
「どうして?」
「実はその――貧乏なんです。」
「常談でしょう。」
粟野さんはかすかに笑い声を洩らした。やや鳶色の口髭のかげにやっと犬歯の見えるくらい、遠慮深そうに笑ったのである。
「君は何しろ月給のほかに原稿料もはいるんだから、莫大の収入を占めているんでしょう。」
「常談でしょう」と言ったのは今度は相手の保吉である。それも粟野さんの言葉よりは遥かに真剣に言ったつもりだった。