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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

四

そしてちょっとまをおいて、例のようにまた口の中で呟いた、

「――此処には盲人でばかな人間が実に多い」

図書助は眉をしかめ、口をへの字なりにしたが、こんどはなにも云わなかった。

四

だがそれから四五日すると、半之助は自分から夫人の部屋を訪ねた。まえぶれなしだったので、なにか書き物をしていた菊枝夫人は慌てて、小間使を呼んで自分用の客間へ案内させようとしたが、彼は構わず坐りこんで、

「お詫びにまいりました」と神妙におじぎをした、

「先日は無礼なふるまいを致しまして申しわけありません、お赦し下さい」

「来て下さればお詫びには及びませんわ」夫人はきげんよく微笑した。

「――あのときはわたくしも悪かったのですから、わたくし貴方が冗談を云ってらっしゃるとばかり思ったんですの、でもあとで考えてみると仰しゃることがよくわかりましたわ、それでいちどわたくしからお詫びを」

「ちょっと待って下さい」

半之助はもじもじしながら、夫人の言葉を遮って、そして吃りながら云った。

「どうもそう仰しゃられると困るんです。実に困るんです、というのがですね、やっぱり私はお詫びをしなければならないんですから」