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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

六

埴谷城代は片手で膝を打ち、口をへの字にし、恐しい眼で半之助を睨みつけた。

「これからすぐ前田へいって、明日登城するからと申してまいれ」

六

城代家老、埴谷図書助は何年ぶりかで登城しはじめた。しかも精力的に事務を執りだしたので、全藩は失望と脅威に陥った。従来あらゆる手段を尽し、こんどは江戸からそのための特使さえ赴任して来たのに、結果は却って逆になった。

――いったい折岩はなにをしたのか。

老職の人々は非常に不満であったし、玄武社の壮士たちは激怒した。かれらは埴谷邸に情報網を張っており、彼の言動をつぶさに知っていたから、これは明らかに裏切りであると認められ、

すべからく問罪すべし。

ということになった。

そんな物騒なことは知らない。或日、半之助は埴谷城代から先に帰れと云われ、一人でお城を下って来た。暑いさかりの午後二時、扇で陽をよけながら、彼はいとのびやかに歩いていた。彼はなぜ図書助が「先に帰れ」と云ったか知っていた。

城代はこの半月あまりのあいだ、竜神川の堤防工事と、町筋改修の犠牲になった人々に対して、賠償と慰藉の方法を立案して来た。それはまじめなものであった。