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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

自分がかれらと果合いを承知したのは、埴谷城代といううしろ盾があったからで、城代が辞職したとなれば迚もそんな事はできない、とうていそんな自信はないと告白した。すると図書助は、すでにその出来事を聞いていたとみえ、騙されんぞという眼で彼を見て、

「しかしおまえ抜刀流の名手で、現に弥九郎の着物の衿を眼にもとまらず」

「とんでもない」半之助は手を振った。

「――あれはごまかしです、あの衿は初めから綻ろびていたんで、それを見たものですからちょいと鍔を鳴らして、だって御城代、衿の縫目を正面から切るなんて、そんな手づまみたいな芸当ができるわけがありません」

「なんとこの、実におまえというやつは」

「しまった」半之助は口を押えた、

「――この家には玄武社へ内通する者がいるんです、今のも聞かれたに違いありません、もうだめです、私はこれから江戸へ帰ります」

「よかろう、そのほうが土地が静かになる」図書助はにやりとした。

「――望みなら辞職届けの使者ということにしてやるぞ」

「ぜひお願いします、但し今夜のうちに出立しますから、すぐお手配をして下さい」

半之助はこうたたみかけ、それから坐り直して、きまじめに相手の眼を見た。