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なんばんひわもりうこんまる
南蛮秘話森右近丸
国枝 史郎
「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页
お迎えに来たと云ってもいい」
玄女はニヤニヤ笑っている。
「首尾は上々この通りさ。うまうま人形を手に入れたよ」
こう云うと猪右衛門は人形を、ヒョイとばかりに突き出した。
「おやマァ大きな人形だねえ。そうして随分立派じゃアないか。どれどれ妾に抱かせておくれよ」
「オッとよしよし抱くがいい」
玄女は人形を受け取ったが、月光に隙かしてつくづく見た。
人形は精巧に出来ている。顔など活きているようだ。今にも物を云いそうである。
「成程ねえ、この人形なら、物を云うかもしれないねえ」
玄女は感心したらしい。で、猪右衛門のやったように、人形の手を引っ張ったり、足を引っ張ったりしたけれども、人形は物を云わなかった。
「とにかくここに突っ立って、人形いじりをしていたって、どうも一向はじまらないよ。家へ帰ってゆっくりと、人形いじりをすることにしよう」と玄女はスタスタ歩き出した。
「それがいいいい」と猪右衛門も、玄女と並んで歩き出した。しかし十間とは行かなかったろう、背後から呼びかける声がした。
「古道具買さん古道具買さん、ちょっとお待ち下さいまし」
それは女の声であった。
驚いた玄女と猪右衛門が足を止めて振り返ると、いずれ走って来たのだろう。