轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原民喜『原民喜戦後全小説』。同一底本的分册已合并为一书。收入:遥かな旅、吾亦紅、忘れがたみ、翳、曲者、西南北東、昔の店、雲の裂け目。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,577 字 · 124 页
それから静三を掬うようにして、前の方の席に乗せるのであった。詰襟の黒い服を着、細長いずぼんを穿いた笠岡はどこか敏捷で花車なところがあった。ずっと古い写真にも、そのとおりの服装で笠岡は写っていた。その写真は静三がまだ生れない頃、庭さきで撮られたもので、築山を背景に店員たちが酒盛をしているのだった。半被を着て盃を受けている爺さんは、今泉のうちの爺さんで、その頃はやはりここの店員だったらしい。爺さんの方へ剽軽な顔つきで徳利を差向けているのは竹村であった。この竹村は店の階下には滅多に姿を現さなかったが、そのかわり二階へ行けば大概一人でせっせと裁ちものをしている姿が眺められた。
二階は電話室の裏側から階段になっていて、表は往来に面した格子だが大きな看板で遮られ、裏は静三の家の二階と遥かに対いあっていた。夏の夕暮、家の玄関に立って、その二階の方を眺めると、簷のところに蚊柱が揺れていて、蝙蝠の姿も閃いた。往来に面した側の簷には燕の巣もあった。そのだだっ広い板の間には大きな裁物台が置いてあって、いつもズックや木綿の裁ち屑が散乱していた。チャコで青いしるしをつけ大きな裁物庖丁でぎゅっぎゅっと竹村は布を切って行く。