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どうきょにんかふう

同居人荷風

小西 茂也

「新潮 第四十九卷 第十二號」1952(昭和27)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,026 字 · 17 页

青空文庫

余、漱石全集を調べたるに書簡集のなかにその言葉を発見せり。

十月九日。先生島崎藤村の老獪なりしことを語り、平田禿木あたりも褒めず、籾山書店を貸倒せりと。まだしも花袋の方が善人なりしよし。

十月十日。先生焼酎四合の配給を渋々顔にて受取り、一口飲んで強くて駄目だと申され、ことさら余の見ておる前にて流しにざっとこぼし捨てたり。余の酒好きなるを先生はよく知りおれり。

十月十二日。読売の記事はまだ出ぬかと、先生連日余に訊ねらる。先生米五升を海神の知己に届けると称し、十分間担げるかどうか時計を見つつ耐力試験を行わんと、座敷内に米袋を背負って時計と睨めっこしおりたり。大賀計理士来り、養子離籍をO家にては拒めりという。

十月十三日。先生米五升背負いて、いよいよ海神に赴かる。余背負い行かんと申出でしが先生答えず。頼むとは言いしことなき荷風かな。

十月廿日。読売新聞三面欄トップに先生の記事と写真出る。先生の下駄ばきと買物籠、これより天下に有名となる。されど先生の予期に反し、本泥棒の件は出でず、ただ近頃の荷風の変人ぶりとその奇行の紹介をのみ。先生大いに失望し、だから新聞記者は嫌いだと申さる。