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どうほう

同胞

豊島 与志雄

「中央公論」1924(大正13)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 页

青空文庫

でも何でもないことなんだ。僕達は兄弟なんだから、兄弟として親しくしたって、ちっとも悪かないんだね。」

「悪いもんか。……君は変だな、どうしてそういろんなことを考えるの。悪い癖だよ。」

茂夫の額は一寸曇りかかったが、すぐに前よりは一層晴々と、而も何だか狡猾そうに、輝いてきた。

「僕にはまだいろんな悪い癖があるそうだよ。」

「どんな癖が……。」

「どんなって、自分じゃ分らないが、お父さんがそう云うんだもの。」

「じゃあ、お父さんは君を愛していないんだね。」

「いや、愛してくれてるよ。」

「だって可笑しいなあ。」

「ちっとも可笑しかないよ。」

そして二人はきょとんとした顔を見合った。

そんなことを話して歩いてるうちに、何処へ行っていいか分らなくなったが、ふと思いついて、植物園へ行ってみた。

桜の花が咲き揃っていて、子供や女の人達がきゃっきゃ云って遊んでいた。二人はその側を通りすぎて、ずっと奥の池の上の、躑躅の間の芝生に坐った。南を受けた斜面なので、足を投げ出してじっとしてると、うとうとと眠くなるような暖かさだった。そしてそこらの藪の中には、蛇や蝦蟇や蛞蝓などがのっそりと匐い出していそうな、もやもやとした温気だった。