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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「恋であろう? お北との恋!」

「おお、それではお武家様には、そんなことまでご存知で?」

「その恋が悪かったのだ」

「ではやっぱり私の兄は……あの女郎のお北めに?」

「無論お北も同腹だが、真の殺し手は他にある」

「それじゃ兄はどいつかに、殺されたのでござんすかえ?」

甚内はワナワナ顫え出した。

「助けてやろうと我々二人、すぐに後を追っかけたが、一足違いで間に合わなかった」

「嘘だ嘘だ! 殺されるものか!」

「凄いような美男の武士……」

「凄いような美男の武士?」思わず甚内は鸚鵡返した。

「定紋は剣酸漿だ。……」

「定紋は剣酸漿!」

「お北の新しい恋男だ。……」

「ううむ、そいつが殺したんだな!」

「その名を富士甚内といった」

「それじゃそいつが敵だね!」

「おおそうだ、尋ね出して討て!」

「お武家!」

というと甚内は、侍の袂を引っ掴んだ。

「う、う、嘘じゃあるめえな※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

「嘘をいって何んになる!」

「う、う、嘘じゃあるめえな※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

「…………」

「嘘じゃねえ、嘘じゃねえ、ああ嘘じゃなさそうだ!」

ガックリ甚内は首を垂れたが、しばらくは顔を上げようともしない。