轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

「おお甚内か、あれを聞きな。何んと素晴らしい音色じゃねえか」

「ああ鼓か。いい音だなあ」兄と並んで腰を掛け、甚内もしばらく耳を傾げた。ポンポン、ポンポン、ポンポンと、なおも鼓は鳴っていた。と、鼓は静かに止んだ。恐らく一曲打ちおえたのであろう。甚三は一つ溜息をした。二人はしばらく黙っていた。

「あにき、この頃変ったな」不意に甚内が咎めるようにいった。「お前、どうかしやしないかな」

「何を?」と甚三は不思議そうに、「別に変った覚えもねえ」「いいや変った、大変りだ。この頃頻りに考え込むようになった。そうして元気がなくなった。そうかと思うと歌を唄うと、まえにも優してうめえものだ」

兄貴、どうだな、思い切っては

「俺らの追分のうめえのは、今に始まった事じゃねえ」甚三は多少の自負をもって、やや得意らしくこういったが、その声にもいい方にも、思いなしか憂いがあった。「宿一杯知れていることだ」

「ああそうともそれはそうだ。宿一杯は愚かのこと、参覲交代のお大名から、乞食非人の類まで、かりにも街道を通る者で、お前の追分を褒めねえものは、それこそ一人だってありゃしねえ。その追分を聞きてえばっかりに、歩いても行ける脇街道を、わざわざお前の馬に乗る、旅人衆だってあるくれえだ。