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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

「もう御よしになったら、いいでしょう。苦しいばかりですわ」と苦々しい顔をする。

「なに苦しくってもこれから少し稽古するんだ。大町桂月が飲めと云った」

「桂月って何です」さすがの桂月も細君に逢っては一文の価値もない。

「桂月は現今一流の批評家だ。それが飲めと云うのだからいいに極っているさ」

「馬鹿をおっしゃい。桂月だって、梅月だって、苦しい思をして酒を飲めなんて、余計な事ですわ」

「酒ばかりじゃない。交際をして、道楽をして、旅行をしろといった」

「なおわるいじゃありませんか。そんな人が第一流の批評家なの。まああきれた。妻子のあるものに道楽をすすめるなんて……」

「道楽もいいさ。桂月が勧めなくっても金さえあればやるかも知れない」

「なくって仕合せだわ。今から道楽なんぞ始められちゃあ大変ですよ」

「大変だと云うならよしてやるから、その代りもう少し夫を大事にして、そうして晩に、もっと御馳走を食わせろ」

「これが精一杯のところですよ」

「そうかしらん。それじゃ道楽は追って金が這入り次第やる事にして、今夜はこれでやめよう」と飯茶椀を出す。何でも茶漬を三ぜん食ったようだ。吾輩はその夜豚肉三片と塩焼の頭を頂戴した。