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のろいのダイヤモンド

呪の金剛石

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1928(昭和3)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,393 字 · 28 页

青空文庫

旧ロシアの帝室ロマノフ家の最後の悲劇は、今更申すまでもありません。あの時、シベリアの寒村で、革命党の刃に倒れた尊いお姫様の一方が、今は最期という時、その胸につけて居られた青ダイヤを外して、涙乍らに私に下されたのです。――長い事お世話になりました、お前は日本人だから、多分無事に此処を逃げられるだろう、左様なら――と、世にも稀なる美しい尊い方が、私の手の上に、熱い涙をさえ流されました」

女の目には、真珠の涙が光ります。打ち仰いで暫らく感慨に耽りましたが、やがて気を取り直して、こう話を続けます。

「青色ダイヤは、誰が何と申しても私のものに相違ありません。けれども、兇暴な三人の土民兵が、その時も私の手から青色ダイヤを奪って、浦塩から日本へと逃げて来ました。ボイロフと此処に死んで居るのは、その時の兵士の内の二人です。あとの一人はとうの昔に、多勢の人とダイヤを争い乍ら死んでしまいました。近くは、舞踊家、ボイロフ、飴屋、それからこの二人、それが皆んな、二百年に亙る青色ダイヤの呪いの歴史を飾る犠牲のほんの一部です。このダイヤの為には、幾人もの王侯が命を失いました。