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のろいのダイヤモンド

呪の金剛石

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1928(昭和3)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,393 字 · 28 页

青空文庫

七

「知って居るどころじゃない、あれはネ、病気を親切に看護した飴屋へ、あの毛唐が死ぬ時形見にやったよ。これを持って居るといい事がある、お前へお礼にやるから、無くしちゃいけないってネ。飴屋は後で死際の人間の心持に逆っても悪いから貰ったようなものの、こんな石蹴りの大きいのなんか、子供へやるより外に仕様があるまいと、そのまま飴箱の中へ投りこんだものさ」

「アッ」

隣の室からは、押し付けられたような驚きの声。

「それからどうした」

「飴屋は、東京は世智辛くていけねエ、おれももう取る年だ、故郷へ帰る面は無いが、我を折ってボツボツ飴を売り乍ら、生れ故郷の土地へ帰ろうって、一昨日の朝チャルメラを吹き乍らこそこそ立ってしまったよ」

「それは本当か、……その飴屋の故郷というのは一体何処だい」

「知らないネ、宿帳は、下谷かどっかの寄留籍になって居るから、国は何処だか、まるっきり解らないな。何んでも、東海道筋を飴を売り乍ら行くんだって事は始終言って居たが……」

隣の室の障子が開いて、美しい顔が半分、廊下の無言劇は、暫らく異常な緊張を続けました。

七

春の東海道筋、「足の勇」と二人伴れで、チャルメラの音を追った旅の馬鹿馬鹿しくも面白さは、いずれ他日の機会に申し上げる事もあるでしょう。